みなさんの中には、今まで自家用車を購入したことがある人も多いと思います。しかし新車を買うとなると、なかなかに値段が張るもの。
「予算的に厳しいから、中古にしよう」と中古車を購入したという人もいるのではないでしょうか。
前オーナーの乗り方や、走行距離などにもよりますが、中古車は新車よりもコストパフォーマンスに優れているケースも少なくありません。
では、ダイトクが取り扱っているようなトラックスケールや台ばかりなど、取引・証明に使用するはかり(特定計量器)の場合はどうなのでしょうか。
確かに中古の特定計量器は、新品のものよりも安く手に入ります。
しかし、元のトラックスケールで設定されている「使用地域」ではそのまま使用することもできますが、コストパフォーマンスで言うと、結果的に新品の方が優れていることが多いのです。
今回はなぜそんなことが言えるのかを、はかりメーカーの視点から解説します。
中古のはかりは「安物買いの銭失い」になりやすい
トラックスケールなど大型のはかりの中古品は、大きく3つの理由から「安物買いの銭失い」、すなわち安いからといって買ったせいで、結局修理や買い替えなどでかえって損をしてしまう可能性が高くなります。
いつ壊れるかわからない
近年のトラックスケールや台ばかりは、ロードセルという機械を使って質量を計っています。このロードセルには疲労寿命があります。
メーカーや種類にもよりますが、おおよそ「○○○○kgの重量で100万回計量したら精度が落ちる」などという表記になっています。
中古車の場合は走行距離で使用状態がわかりますが、計量器の中古品を購入した場合、この疲労寿命がどれだけ残っているか把握できないため、いつ壊れるかわかりません。
「プロが調べればわかるのでは?」と思うかもしれませんが、残念ながらダイトクのような専業メーカーが調べても、中古品のトラックスケールや台ばかりに使われているロードセルの寿命まではわからないのです。
壊れれば当然修理などに余計なコストがかかります。また、大型のはかりというのは、基本的に事業の根幹を担う重要な設備です。
そのような設備がいつ壊れるのかわからないというのは、非常に大きなリスクとなるでしょう。
解体・移設等のコストがかかるので、結局新品並みの導入コストがかかる
「どこで計量しても同じ結果」を実現するキャリブレーションとは?でも説明しましたが、特定計量器は設置される地域に応じて精度が調整されます。
そのため設定されている地域から別の地域へ場所を移動させると、それだけで国の基準に基づいた検査(検定)を受け直す必要が生じます。
新品の場合は工場で効率よく検定(注1)ができますが、据え付け現場で行う場合は分銅などの輸送料・重機代・作業費や行政による検定費などのコストがかかります。
加えて、大型のはかりを移動させるには、専門的な知識・経験・技術を持った業者による解体・設置の作業が必要です。
さらには「いつ壊れるかわからない」状況を回避するには、本体(架台・計量台)だけを残してロードセルをはじめとする周辺機器を新品にする必要も出てきます。当然ですが、これらにもコストがかかってきます。
またパーツを入れ替えた場合、改めて検定を受け直さなければなりません。そのため仮に場所の移動が発生しなくても、ロードセルや指示計を入れ替えれば検定のための費用が生じます。
結果、購入価格にコストがどんどん上乗せされて、最終的には新品並みの導入コストがかかってしまうことは珍しくありません。
遠距離になれば輸送費がかさみますし、据え付け現場で分銅を使って重量確認をするにも前述のような重機代や作業費がかさみます。そのため「結局新品の方が安かった」というケースも多いのです。
注1:「指定製造事業者」のみが可能。ダイトクは指定製造事業者のため新品の場合は自社で国が行う「検定」と同等の「自主検査」が実施できます。
古いものの場合は現在の検定を受けられない可能性がある
はかりの精度等級はどうやって決まる?とても大切な検定と検査の話でも説明しているとおり、特定計量器として使うためには、国の基準に基づいた検定に合格している必要があります。
しかし古いトラックスケールなどの中には、そもそも現在の検定を受けられない製品も少なからず存在します。
こうしたトラックスケールを中古で購入した場合、そのトラックスケールは取引・証明には使えないので、電装品を替えて検定を受けたり、別のトラックスケールに買い換えたりするほかありません。
海外製のはかりについて
中古のはかりと同様、海外製のはかりも低コストで購入できるものが多いうえ、ネット通販などでも気軽に購入できるため、導入を検討している人もいるかもしれません。
しかし海外製のはかりは日本の技術基準に合わせて作られていないため、原則取引・証明に使用することはできません(※)。
弊社のお客様の中には「海外製品を買ったはいいが、取引・証明に使えないから、結局買い換えた」という人もいます。
また品質そのものに問題がある場合もあります。過去には「クレーンスケールのフックが荷物を吊り下げている最中に破損し、頭上から荷物が落ちてきた」というケースもありました。
したがって、海外製のはかりも中古のはかりと同じくコスト面では優れているものの、「安物買いの銭失い」になるリスクが高いと言えます。
※日本の法律で定められた指定外国製造事業者が製造する製品で、かつ法令(JIS)に沿った検定を受けていれば使用可能。
トラックスケールなどのはかりは「プロに相談してから判断する」がおすすめ
トラックスケールなどのはかりをせっかく中古でお得に購入できても、買い替えや余計なコストがかかってしまえば意味がありません。
そうした事態を回避するための最善策は、「プロに相談してから中古か新品かを判断する」です。
仮に「工場を居抜きで購入したら、大型はかりもついてきた」「その大型はかりは正しく検定・定期検査を受けていた」という2つの条件が揃えば、簡単な手続きだけでそのはかり使い続けることは可能です。
しかしそれでも「いつ壊れるかわからない」という点は変わりません。不安なく使い続けようと思うと、前述したようにロードセルの交換や検定などをしなければならないので、コストがかかります。
これらのリスクやコストを考えた場合、結局ベストの選択肢は「まずはプロに相談」になるのです。
まとめ
中古の特定計量器は「購入価格が安い」という一点においては、新品の特定計量器よりも格段に優れています。
しかしここまで見てきたように、中古のはかりには様々なリスクがあると同時に、導入コスト全体で見ると場合によっては新品とほとんど変わらない金額がかかることもあります。
はかりの導入にあたって、こうしたリスクや余計なコストを回避するには、専門家の手を借りるのが一番の近道です。
「新品の国内製特定計量器を導入する」と一口に言っても、作り方次第ではコストを抑えることも十分可能です。ダイトクのようなはかりのプロにご相談いただければ、お客様の要望に合わせた最適な提案をいたしますので、ぜひ一度ご連絡いただければ幸いです。