トラックスケールはトラックや、トラックに積んだ荷物の重さを計るために使われる大型の計量器で、ごみ処理業や古紙金属回収業、砂利砕石業などを営むユーザー様にとっては欠かせない設備です。台貫(だいかん)や看貫(かんかん)とも呼ばれます。
ここでは、トラックスケールがこうした事業において果たしている役割を公正な取引という視点から解説するとともに、トラックスケールの種類やトラックスケールの構造についても解説します。
トラックスケールは公正な取引の要を担う計量器
正しい計量=公正な取引
トラックスケールは実に様々な業界で活躍しています。
- ごみ処理業(リサイクル業、中間処分業、最終処分業)
- 古紙回収業
- スクラップ業
- 砂利砕石業
- 鉄鋼業
- コンクリート業
- 道路、ゼネコン業
- 化学系製造業 など
この他にもトラックなどの過積載防止のために、高速道路や国道、港湾、物流拠点などに設置される場合もあります。ではなぜこうした業界で、トラックスケールが必要とされるのでしょうか。最も大きな理由は、公正な取引のためです。
例えばスクラップ事業者のヤードにスクラップを持ち込む場合、○トンあたり○円という形でスクラップ事業者が買い取ります。このとき1.5トンあるものを1.4トンと間違えて計量すればスクラップを持ち込んだ事業者は損をしますし、逆に1.6トンと間違えて計量すればスクラップ事業者が損をします。あるいは化学系製造業の工場から化学薬品を出荷する際も、重量を計り間違えれば取引先や自社の損につながります。
このように正しく計量するということは、すなわち公正に取引するということでもあるのです。
取引・証明に使うトラックスケールは検定・定期検査での合格が必要
しかしトラックスケールを使っていれば、それで正しい計量と公正な取引が実現できるというわけではありません。
例えば一般家庭で使われている大手電機メーカーの体組成計には誤差が±200~600g程度あるものも珍しくありません。仮に100kgの荷物を載せたとして誤差が+600gあったとしたら、1トンになれば6kg、10トンになれば最大60kgの誤差になります。このような精度では正しい計量とは言えず、公正な取引にはなりません。
そのためトラックスケールを取引や証明に使う場合は、すべて国が定めた基準に基づいた検定と定期検査に合格している必要があります。例えば検定では最大40トンを計量できるトラックスケールは、40トンの荷物を載せても誤差が±15kg以内に収まっていなければならないとされています。
これは先ほどの体組成計の例で言えば、100kgの荷物を載せたときにたった±38gの誤差に収まっているということです。検定と検査についてでも説明しているので、より詳しく知りたいという方は参照してみてください。
検定に合格した高精度な計量器は検定品の特定計量器と呼ばれますが、ダイトクで取り扱っているトラックスケールは、基本的に全ての製品がこの検定品の特定計量器です。そのため正確な意味での正しい計量と、公正な取引が実現可能です。
トラックスケールはどうやって計量しているのか?
トラックスケールの計量の仕組み
取引や証明に使う場合は、非常に高い精度が求められるトラックスケールですが、現在製造されているトラックスケールに限って言えば構造は非常にシンプルです。トラックスケールを構成しているのは、主に次の4つです。
・計量台
・ロードセル
・和算箱
・指示計
計量台に荷物を積んだトラックが載ると、計量台の四隅(ロングタイプの場合は6つ)に設置されたロードセルが重さを感知します。各ロードセルは感知した重さの情報を信号にして和算箱に送り、和算箱は全てのロードセルからの信号を合算して指示計に送ります。結果、荷物を含んだトラックの総重量が指示計に表示されます。
ここでトラックは一旦計量台を降り、所定の場所で荷物を降ろします。そして荷物を降ろした車両だけの状態で再度計量すると空車重量*が表示されます。荷物を積んでいた時の総重量*から空車重量を差し引いて、荷物の正味重量*を計算します。これがトラックスケールを使った基本的な計量の仕組みです。
以下では和算箱を除いた計量台、ロードセル、指示計についてもう少し詳しく見ておきましょう。
※現在は「空車質量」「総質量」「正味質量」と表記する指導がなされていますが混乱を防ぐために「重量」と記載しております。
ニーズに柔軟に対応できる計量台
計量台は基本的に鉄で作られていて、全部で4つの種類があります。最も一般的なタイプは地上型と呼ばれ、名前の通り地上に基礎を作ってコンクリートのスロープを設置して、トラックが計量台に上がれるようになっています。これを薄くして地上型よりも設置スペースを節約できるのが地上薄型です。
地中深くに基礎を作り、地中に計量台を埋め込むタイプは埋込型と呼ばれており、設置スペースが狭い場合に重宝されています。これを薄くして、基礎が浅くてもトラックスケールを利用できるのが埋込薄型です。
トラックスケールの選び方では4つの種類をどう選ぶかについて詳しく解説しているので、トラックスケールの導入を検討している方はぜひ参照してください。
計量の要となるロードセル
ロードセルは荷重変換器とも呼ばれる装置で、荷重を受けて変形し、その際に生じる金属のひずみを電気量に変換するセンサーです。ロードセルを使ったトラックスケールや台ばかりは、この特性から電気抵抗線式はかりと呼ばれています。
ロードセルはトラックスケールの計量の要なので、この部品が壊れると正しい計量はできなくなります。何回負荷がかかったかということが直接的な寿命に影響し、修理ができない部品のため壊れた時点で交換しなければなりません。また長年利用することで精度が落ちていく可能性があり、定期的に精度を確認し、メンテナンスをする必要があります。
重量表示・データ処理を担う指示計
トラックスケールにおける指示計は重量表示のほか、簡単な集計作業などのデータ処理を行うこともできます。ユーザー様が直接操作する機器になるため、ユーザー様のニーズに合った指示計を選ぶ必要があります。
例えばダイトクが提供している指示計にはタッチパネル式で直感的に操作できる製品がありますが、工場作業員の方が自ら計量を行うような場合は「手袋をしたまま操作したい」「手が汚れているのでタッチパネルだと使っているうちに汚れのせいで操作しにくい」といった要望や不満が生まれることがあります。一方事務員の方が計量を行う場合は、操作性の高いタッチパネル式の指示計のほうが向いているというケースもあります。
ダイトクではこうしたニーズに対応するために、タッチパネル式を採用した指示計(AD4352、F890A)以外に、携帯電話に似たボタン入力方式を採用した指示計(AD4350 A、AD4350 B)をラインナップしています。
またより複雑なデータ処理が必要なユーザー様にも対応できるよう、低コストで柔軟に機能をカスタマイズできる計量システムをオプションとして提供しています。ダイトクの計量システムができることやメリットなどについては、計量システムの役割で詳しく解説しています。
トラックスケールが現在の形になるまで
非常にシンプルな構造で高い精度の計量と公正な取引を実現しているトラックスケールですが、最初から現在の形で発明されたわけではありません。かつては今よりもずっと精度が低く、間違った計量が行われることも多かったのです。
全てのはかりの原点は棒ばかり
最も原始的なはかりは、棒に紐をつけ、そこにぶら下げた重りと釣り合うかどうかで計量する棒ばかり(竿ばかり)です。この次に発明されたはかりが、理科の実験などで使われる上皿天秤です。このはかりは18世紀ごろにヨーロッパで発明されています。この上皿天秤の仕組みを利用して作られたのが台ばかり。イギリスのワイアットという人物が発明したこのはかりの登場により、数十トンの重さも計量できるようになります。
台ばかりは大正時代の日本にも入ってきていて、1921年(大正10年)にはJIS規格の原型である工業品規格統一調査会が発足。このときからテコの原理を応用した、高い精度の機械式台ばかりである規格台秤(きかくだいひょう)が作られるようになります。
規格台秤はテコの原理を繰り返し使っているため、計量台に載っている荷物に対して、細かい物では100分の1の増しおもりを使えば重量を計測できる仕組みになっています。
現在も活躍し続ける機械式トラックスケール
この規格台秤の仕組みを転用して生まれたのが、機械式トラックスケールです。機械式トラックスケールは現在のロードセル式トラックスケールと同様、計量台に載って計量しますが、現在のようにトラックが載るだけでは計量できません。
こちらの写真は、30年近く前にダイトクで作成された機械式トラックスケールの取扱説明書の一部です。機械式トラックスケールの場合、トラックが計量台に載ると重量に応じて計量台が沈み、それが槓桿(こうかん)と呼ばれるテコの原理を利用した部品を通じて事務所の中にあるビームボックス(秤桿、上の写真)と呼ばれる設備へと伝わります。
このビームボックスは棒ばかりを複数組み合わせたような仕組みになっており、事務員の方などが大錘(だいすい)や小錘(しょうすい)といった重りを使って釣り合わせて初めて計量が完了します。
このように計量に手間のかかる機械式トラックスケールですが、実は現在も現役で活躍している製品もあります。というのも現在のロードセル式トラックスケールに比べて、機械式トラックスケールは非常に耐久性が高く、長く使っていてもメンテナンスをすれば高い精度を維持し続けられるからです。
確かに構造が複雑で今現在製作するとなると非常にコストが高くなることと、メンテナンスをする職人がほとんどいないことから、現在新しく作っているメーカーはありません。しかし長いところで50年程度使い続けているユーザー様もいるほど、耐久性には秀でているのです。
機械式トラックスケールからロードセル式トラックスケールへ
耐久性に優れているうえ、精度面でも高いパフォーマンスを維持できる機械式トラックスケールが淘汰されたのは、構造の複雑さや職人不足だけが原因ではありません。機械式トラックスケールでの計量には、どうしても人の手が入ってしまうため、見る角度や釣り合いの感覚が人によって違うなどの不確実さがあることが大きな原因です。
こうした状況を打破するために開発が進められたのが、ロードセルでした。前述したようにロードセルは金属のひずみを電気量に変換するセンサーです。このひずみを計測するのがひずみゲージと呼ばれる装置で、1940年に米機関車メーカーのボールドウィン社が初めて実用化に成功しています。
日本では第二次世界大戦後にようやく研究が盛んになり、現在は高精度のひずみゲージを搭載したロードセルを国産で作れるようになりました。結果、人の手を介することなく、客観的な重量を高精度で計量できるようになったのです。現在のロードセルを使ったトラックスケールや台はかりの構造は、多くの人が公正な取引を目指して試行錯誤した結果と言えるでしょう。
ダイトクのトラックスケールで正しい計量と公正な取引を
ダイトクのトラックスケールは国が定めた厳格な基準を満たす、高い精度を実現しています。もちろんトラックスケールのような大きなはかりで、高い精度を出すのは簡単ではありません。しかしユーザー様に安心して計量と取引を行ってもらうために、丹精込めて作っています。トラックスケール導入の際は、ぜひ正しい計量と公正な取引を実現できる、ダイトクのトラックスケールをご検討ください。