貴金属や宝石の質量の単位として使われる「カラット」「もんめ」「トロイオンス」。

ジュエリーショップなどでは当たり前のように使われているこれらの単位ですが、具体的に何の質量を表すものか、なぜその単位が使われるようになったのか、など細かい部分は意外と知っているようで知らないのではないでしょうか。

そこで今回は、「知っているようで知らないシリーズ 貴金属・宝石単位編」と題して、カラット、もんめ、トロイオンスの3つの単位について使われ方や歴史について解説したいと思います。

INDEX
  1. 語源は古代ギリシアにあり!ダイヤの重さ&金の純度を表す単位「カラット」
  2. 実は世界の共通単位!真珠の重さを表す単位「もんめ(Momme)」
  3. 中世フランスから使われている!金貨の重さを表す単位「トロイオンス」
  4. まとめ

語源は古代ギリシアにあり!ダイヤの重さ&金の純度を表す単位「カラット」

ダイヤ

ダイヤの重さ&金の純度を表す単位「カラット」

カラットはフランス語表記で「carat」と書かれ、単位としてはct(計量法の表記)やcarと書かれます。

ダイヤの大きさ(=体積)を示す単位と思っている人もいるかもしれませんが、正しくはダイヤの質量を示す単位として使われています。

質量を示す単位で一番知られているのはグラム(g)ですが、宝石の取引では商習慣としてカラットが使われることが多いため、日本の計量法では「宝石の質量の計量」にだけ限定的に使用を認めています。

またカラットは英語表記で「karat」と書いて、金の純度にも使われています。

ジュエリーなどで「18金」や「24金」といった言葉を聞いたことがあるかもしれません。金の純度を示す数字で、24金とは純度約100%の金を指します。

18金は18KやK18、24金は24KやK24という風にも言われるのですが、このKは実はkaratのKなのです。

古代ギリシアに語源がある、由緒正しい単位

「carat」も「karat」も、語源は古代ギリシア語の「κερατιον(keration、イナゴマメ)」にあります。

当時宝石の重さを表す際「イナゴマメ何粒分の重さか」が基準になっていたため、カラットが単位として使われるようになったとされています。

つい100年ちょっと前までは、世界には無数の単位があり、今のように統一されているケースは珍しいものでした。

これはカラットも同じ。わかりやすく言えば大阪カラットと東京カラットがあり、どこで宝石を取引するのかで、微妙に定義が変わっていたのです。

これが現在の1カラット=200ミリグラムに統一されたのは、1907年に行われた世界各国が集まった国際会議(メートル条約の会議)でのこと。

そのため当初は他のカラットと混同されないように、メートル系カラットと呼ばれていたそうです。

カラットは何百年も質量の単位として使われてきました。したがって、金の純度として使われているのはかなりのイレギュラーです。ではなぜ純度の単位になったのでしょうか。

時代は中世後期(1300年〜1500年頃)に遡ります。当時は単位と同様、通貨も地域によっていろいろなものがあったため、それぞれの通貨の価値もバラバラでした。

例えば「九州金貨と四国金貨では純度に違いがあり、九州金貨の方が金の純度が高く、価値がある」といったことが当たり前にあったのです。

そこで金の純度の基準として使われたのが、当時の通貨の一つ「マルク金貨」でした。

このマルク金貨1枚=233.85gを24カラットとし、それよりもどれだけ軽いかで22カラット、20カラット……という具合に金の純度を計量するようになりました。

「カラット」と一口に言っても、こんなにも長い歴史があるのです。

実は世界の共通単位!真珠の重さを表す単位「もんめ(Momme)」

真珠

実は真珠の世界共通単位「もんめ」

もんめ(匁)は、1匁=3.75グラムを示す質量の単位で、計量法では真珠の質量の計量に限って使用が認められています。

国際的な単位は、得てしてヨーロッパが発祥です。メートルもグラムも、先ほど紹介したカラットもヨーロッパ生まれの単位です。

しかしこのもんめは、実は真珠の質量を示す単位として「momme」もしくは「mom」の表記で、世界の共通単位として使われています。

なぜ「もんめ」は世界の共通単位になれたのか?

もんめはもともと日本の古い計量基準である尺貫法に基づいた単位です。なぜ尺や貫ではなく、もんめが世界の共通単位になれたのでしょうか。

それは明治から昭和にかけて、日本が世界トップクラスの真珠の特産地だったからです。

もともと真珠は天然の貝からしか見つからず、養殖をするのは困難でした。

しかし明治の中頃に日本人の御木本幸吉(現在のMIKIMOTOの創業者)が真珠の養殖に成功。大正時代にはヨーロッパで、天然物よりも25%も安い価格で養殖真珠を販売し始めます。

ところがこれを見たパリの天然真珠業者組合は「養殖真珠は偽物だ」とクレームをつけ、不買運動を起こします。

御木本幸吉は不買運動を受けて民事裁判に訴え、養殖真珠は本物だということを証明しようとします。

この裁判では当時の一流真珠研究者が登場し、御木本幸吉の養殖真珠の鑑定を行います。

その結果、御木本幸吉の真珠は学者たちから「養殖真珠は天然真珠となんら変わるところがない」というお墨付きをもらうことになったのです。

養殖真珠=本物という証明がされたことで、御木本幸吉は販路を世界的に拡大。日本を養殖真珠の一大産地に発展させました。

このとき、日本が真珠の質量の計量に使っていた単位がもんめだったのです。

もんめが世界共通の単位になった背景には、日本の商人の魂があったんです。

中世フランスから使われている!金貨の重さを表す単位「トロイオンス」

金貨

金貨の重さを表す単位「トロイオンス」

トロイオンスはoz tr、oz t や ozt、oz(計量法の表記)と書かれ、1トロイオンス=31.103 4768グラムと定められています。

日本の計量法では、金貨の質量の計量のときにだけ使用が認められた単位です。

そのため金投資などで扱われる金のインゴットはグラム表記ですが、金貨の時だけトロイオンス(もしくはオンス)の表記が使われます。

中世フランスの大きな市場で使われた共通単位

トロイオンスの「トロイ」は、フランス首都パリの東側にあるシャンパーニュ地方に位置する「トロワ(Troyes)」のこと。

シャンパーニュ地方はマース川、モーゼル川、セーヌ川という3本の河川に囲まれているため、輸送手段のメインが船だった当時のヨーロッパの交通の要衝になっていました。

これにより、シャンパーニュ地方ではヨーロッパ各地からたくさんの商人があつまる「シャンパーニュの大市」が開かれるようになります。

加えて1300年頃にシャンパーニュ地方の領主がフランス王家と密接な関係を持つようになり、商業がますます発展することに。

結果「シャンパーニュの大市」の主要開催都市であったトロワには、それまで以上にたくさんの商人が集まり、同時に様々な地域の様々な金貨・銀貨が流れ込むようになります。

さきほどカラットのところで見たように、正しい取引をするためには明確な基準が必要になります。そこで採用されたのがトロイオンスだったというわけです。

現在も金貨の質量の計量にトロイオンスが使われ続けるのは、このような背景があるからなのです。

まとめ

なんとなく知っている気になっている単位も、こうやって見てみるといろいろな歴史があり、その歴史があったからこそ、現代になっても使われ続けているということがわかります。

単位は正しく使う人間がいてはじめて生き残ることができます。正しく使われなければ取引などに使えないからです。

今日本国内で使われている単位や、国際的な取引で使われているような単位は、いずれも多くの人がその単位を正しく使おうと努力してきたからこそ、生き残っているのです。

普段何気なく使っている単位にもそうした影の努力があるのだということを、頭の片隅にでも置いておいていただけたら、正しい計量を守るべく日々尽力しているはかりメーカーの一つとして、これほど嬉しいことはありません。

ダイトクマガジンでは今後も、今回のような計量に関する知っているようで知らないお話をしていけたらと思っております!