「ロードセル 」とは質量やトルクといった力を測るセンサーのことです。力の測定には光、静電容量などの計測方法がありますが、今回は「ひずみゲージ」という装置と「起歪体」という金属材料を使って力を計測するロードセルについて説明します。
ダイトクの計量器に使用されているロードセルの形状は、台ばかりに使われている直方体の「ビーム型」と、トラックスケールに使われているミシンのボビンのような形をした「コラム型」の2種類。
これらのロードセルはいずれも故障(精度が出なくなる、動作しなくなる、など)すると、分解して中身を交換するなどの「修理」ではなく、ロードセルごと入れ替える「交換」での対応になります。
そのため、ロードセルが故障したとなると、なかなかのコストになります。したがって、ロードセルが組み込まれているはかりを使う際は、できるだけ故障しないような使い方を心がける必要があります。
今回はそもそもどうしてロードセルが故障するのかという点を説明したうえ、長持ちさせるための3つのポイントを解説します。
ロードセルなぜ故障するのか?
ロードセルの故障の主な原因は以下の4つです。
災害等による故障 | 落雷、漏電、洪水、地震などが起きると、過電流やショート、変形などが起きて故障する。 |
---|---|
定格加重を超える重量物を繰り返し載せたことによる故障 | 定格加重(計量できる最大荷重)を超えた重量物を繰り返し載せると、変形などが起きて故障する。 |
疲労寿命を超えたことによる故障 | 疲労寿命(定格加重内で何回負荷をかけられるか)を超えると、変形などが起きて故障する。 |
急激な偏加重を繰り返し与えたことによる故障 | 決まった方向以外から負荷をかけることで、変形などが起きて故障する。 |
ロードセルは高精度のセンサーですが、そのぶん非常に緻密に作られています。一度変形や破損が起きてしまうと、分解して中身を交換するなどの「修理」はできず、元の精度を取り戻すことができません。
したがってロードセルは一度故障してしまうと、ロードセルごと入れ替える「交換」での対応しかできないのです。
ロードセルを長持ちさせるための3つのポイント
壊れてしまったロードセルは交換するしかありませんが、ロードセルは1個数万円〜数十万円。仮に四点式トラックスケールのロードセルが4つ全て壊れてしまったとなれば、かなりのコストになってしまいます。
余計なコストを防ぐには、なるべく壊れないように使う必要があります。もちろん落雷や洪水、地震などの災害や(※)、疲労寿命を迎えたことによる故障はどうにもできないケースもあります。しかし工夫次第で防げる故障もあるのです。
それは「使い方」による故障です。以下ではロードセルをなるべく長持ちさせるための、使い方のポイントを3つ紹介します。
※災害の場合は保険などへの加入により費用面での負担を減らすことは可能です。
定格加重を超えるような荷物を載せない
10トンなら10トン、20トンなら20トン、ロードセルの定格加重を超えるような荷物を載せないことが、最初のポイントです。
定格加重を超える負荷がかかる回数が増えれば増えるほど、ロードセルに無理をさせることになりますから、それだけ故障するのが早くなってしまうからです。
「それなら、最初から定格加重の大きいロードセルを使っておけばいいのでは?」と思うかもしれません。
確かに車なら、時速120kmまでしか出せないマシンが時速100kmで走るのと、時速200km以上出せるマシンが時速100kmで走るのとでは、後者の方がマシンへの負担は圧倒的に小さくなります。
しかし、ロードセルの場合は少し違います。なぜならロードセルにおいては精度が非常に重要だからです。定格加重を大幅に上げると、ロードセルの感度は下がります。結果精度を保つのが難しくなってしまうのです。
そのためロードセルは「適切な定格加重のものを、適切な質量の荷物の計量に使う」が正解なのです。
台ばかりに荷物を載せるときは「ゆっくり、優しく」が鉄則
喫茶店で、コーヒーのカップを机に叩きつけるように勢いよく置けば、当然割れてしまいます。それではお店の人に怒られてしまいますから、普通はゆっくり、優しく置きますよね。
ロードセルも同じです。勢いよく乱暴に荷物を載せれば、そのぶん本来の荷物の質量よりも大きな負荷がロードセルにかかり、壊れやすくなります。
例えばフォークリフトやクレームを使って、台ばかりに荷物を載せるときには、特に注意が必要です。
台ばかりやトラックスケールといった大型のはかりは一見頑丈そうに見えますが、内蔵されているロードセル自体は繊細な機械です。「ゆっくり、優しく」扱うようにしてあげてください。
トラックスケールに乗るときは「急ブレーキ・急アクセル・急ハンドル」はNG
急ブレーキを踏めば、勢い余って体が前につんのめります。急アクセルを踏めば体は後ろに強く引っ張られます。急ブレーキの場合は車体の前輪に、急アクセルの場合は車体の後輪に強い負荷がかかっています。
これをトラックスケールの上でやってしまうと、それだけ前後のロードセルに強い負荷がかかることになります。
負荷が定格加重内であれば問題はありませんが、なかなかそうはいきません。たいていの場合は定格加重以上の負荷がかかることになり、ロードセルの故障を早めることになります。
速いスピードで計量台に乗ってしまった場合も同様です。スロープや基礎の段差によりタイヤが浮き上がるため、重量の数倍の負荷がかかることがあるからです。
またロードセルは垂直方向の荷重を計測するように作られていますが、トラックスケール上で急ハンドルを切ると斜め方向の力がロードセルに加わってしまいます。
これもロードセルの故障を早めるNG行為です。特にトラックスケール上でのフォークリフトでの作業は、ハンドルを大きく切ることがあるため慎重に行わなければなりません。
そのためトラックスケールに乗るときは「急ブレーキ・急アクセル・急ハンドル」をせず、ゆっくりまっすぐ乗って、ゆっくりまっすぐ降りることを徹底しましょう。
まとめ
ロードセルは一度故障すると、ロードセルごと入れ替える交換でしか対応ができません。そのため丁寧に扱い、なるべく壊れないように使うことが、余計なコストをかけないためには必要です。
とはいえ性質上、ロードセルはいつかは故障するものです。精度が落ちたり、挙動に違和感がある場合は、ぜひともダイトクまでご相談ください。