トラックスケールの製作過程でのこだわりについては、手抜き一切なし!ダイトクのお客様第一なトラックスケールの作り方で紹介しましたが、その一歩手前の工程である設計においても、ダイトクにはこだわりがあります。それは製作過程でのこだわりと同様に、お客様を第一に考えた結果です。
ここでは設計の分野において、これまでダイトクが苦労してきたことや、こだわっていることについて紹介します。トラックスケールを始め、ダイトクのスケールがなぜ他社に比べて正確で丈夫なのかを知っていただければ幸いです。
メーカーとしての体力を引き上げた空港用スケール開発
空港用スケールへの新規参入が難しい理由
現在日本で空港用スケールの製造を行なっているメーカーはほとんどありません。これは、このスケールの開発には組織として相応の体力と技術力が必要だからです。
空の安全を守るダイトクの空港用スケールでも紹介しているカウンタースケールやコンベアスケールをはじめとする空港用スケールの多くは、基本的にひょう量(最大計量値)が300kg未満の小さいものになっています。
そのため取引や証明に使う計量器(特定計量器)として使うためには、国立研究開発法人産業技術総合研究所などの機関に持ち込んで厳しいテストに合格しなければいけません。このテストでは耐電磁波検査や耐静電気検査、炉の中に入れて行う耐熱検査なども行われます。合格水準もかなり厳しく設定されています。
空港用スケール開発の難しさは、設計の段階で「この設計で大丈夫だろう」と思っていても実際に製作してみて、テストに出してみると、合格水準に達しないというケースが多いという点です。
実際ダイトクが最初に空港用スケールを開発した際も、何度も何度も不合格を繰り返して、ようやく合格することができました。1回のテストには1ヶ月〜1.5ヶ月はかかりますから、企業としての体力と技術力が試された開発だったと言えるでしょう。
しかし開発自体は大変なチャレンジでしたが、それを乗り越えることで製作・設計部門の体力は間違いなく強化されたと自負しています。
実はオーバースペックなカーゴスケール
カーゴスケールは飛行機に積み込む前に貨物を計量し、貨物のバランスが均等になるようにするための要となるはかりです。
安全なフライトには貨物のバランスが必要不可欠なので、もしこのスケールが機能しなくなれば、飛行機はフライトを中止せざるを得ません。2018年の台風21号の際、関西国際空港が営業を再開できたのはカーゴスケールが迅速に復旧したからです。それほど重要なスケールであるため、精度はもちろんのこと、壊れにくいということが非常に重要視されます。
また、空港側は万が一に備えてスケールメーカー側と「トラブルがあった際は○時間以内に対応する」という契約を結んでいるので、メーカー側としてもできるだけ壊れにくいものを作る必要があります。
そのためダイトク製のカーゴスケールは、設計の段階で、他のスケールでは考えられないほど剛性の高い素材と構造を採用しています。
これも前述した空港用スケールと同様、一朝一夕に完成したものではなく、取引先航空会社様との間で「この設計でどうか」「いやもっと丈夫にしてほしい」「これではどうか」「いまもっと壊れにくく!」というやりとりを何度も繰り返して作り上げたものです。結果として、正直なところオーバースペックではないかと思えるほどのカーゴスケールが出来上がったのです。
確かに当時は苦労をしましたが、こうしたやりとりの中で培った設計のノウハウは、確実にその他のスケールにも生かされており、正確かつ丈夫なスケール作りへとつながっていると考えています。
台ばかりの精度のためにダイトクが注意していること
スケールにとってたわみは天敵
スケールの天敵は計量台のたわみです。たわみが起きると計量のためのセンサーであるロードセルに正しく負荷が伝わらず、精度を出すことが難しくなるのと同時に、ロードセルの寿命も縮めてしまうからです。
このたわみは架台の鋼材を大きくするほど、計量台の鉄板の厚みを厚くするほど小さくすることができます。しかしスケールを厚くすれば基礎工事の費用や材料代がかさむなどのデメリットも生じます。そのため「たわみにくいから」と言って、本体も計量台も分厚いスケールを押し付けるわけにはいきません。
「集中荷重」にも対応できる設計と素材選び
そこで多くの台ばかりのメーカーで採用されているのが、等分布荷重だけに対応した設計です。つまり計量台に対して均等に、面で荷重がかかるケースだけを想定して設計するのです(図2)。こちらの方が比較的設計しやすく、かつコストも抑えられるメリットがあります。
しかし集中荷重がかかった場合、つまり計量台に対して不均等に、点で荷重がかかった場合、等分布荷重だけを想定した台ばかりの計量台はどうしてもたわみが大きくなってしまいます(図3)。結果正確な計量ができないばかりか、構造や素材によっては曲がったまま戻らなくなり、その後の計量にも支障が出てしまう可能性もあります。
ダイトクではこのような事態をあらかじめ防ぐため、設計の段階で集中荷重にも対応できる設計と素材選びを心がけています。そのためダイトク製の台ばかりは、他社製に比べてより安心してお使いいただくことが可能です。
まとめ
スケールのメンテナンスや修理には安くとも数万円程度のコストが必要になります。多くのスケールは10年以上使い続けられますから、1回あたりが数万円でも、積み重なれば思いの外高額なコストへと膨らんでしまいます。しかも修理が終わるまではそのスケールを使った作業はストップしてしまいますから、そのぶんの損失も発生します。
これらのコストや損失を抑えるためには、正確かつ丈夫な製品を選ぶほかありません。ダイトクはこうしたニーズに応えるために、製作過程だけでなく、設計にもこだわりを持っているのです。