トラックスケールはダイトクの主力製品で、本社のある大阪では7〜8割近いシェアを誇っているほか、近畿圏でもトップクラスのシェアを占めています。このように多くのユーザー様から支持をいただいているトラックスケールは、全て自社の工場で製作したもの。そこには長年トラックスケールを作り続けてきた熟練工のこだわりが詰まっています。
ここでは大まかなトラックスケールの製作工程を紹介したあと、ダイトクがトラックスケールを作る際に大切にしている3つのこだわりについて紹介します。
一般的なトラックスケールの製作工程
工程 | 作業内容 |
---|---|
1-1.パネル・継ぎ製作 | 鋼材やH鋼、鉄板などを切断、溶接してトラックスケールの部品を作っていきます。 |
1-2.主桁製作 | パネル・継ぎ製作と並行して、トラックスケールの柱とも言える主桁を作っていきます。 |
2.組み立て | 各部品をトラックスケールの形に組み立てます。 |
3.電装品組み込み | 指示計や和算箱、ロードセルなどの電装品をトラックスケールに組み込んでいきます。 |
4.調整・完成品検査(検定) | 分銅を使って高い精度になるようにトラックスケールを調整していきます。これが終われば出荷です。 |
こちらの5つがトラックスケールの基本的な製作工程です。こうして作ったトラックスケールはユーザー様のもとへと運ばれ、据付されます。
この5つの工程の中で、ダイトクが特にこだわっているのがパネル・継ぎ製作での溶接と主桁の太さ、そして調整・検定での精度です。以下ではこの3つのこだわりについて紹介していきましょう。
熟練工だからこそできる「ひねり」の出ない溶接
例えば薄い鉄板を曲げた状態で溶接すると、鉄板が元に戻ろうとする力がそのまま残ります。この力を残留応力と呼びます。実はこの残留応力は、トラックスケールを作る際の溶接でも発生しています。溶接は金属を強力に固定する反面、同時に強力な残留応力も発生させるのです。
そのため溶接の順番を間違えると、残留応力がひねりや反りといった形で現れてしまいます。それがトラックスケールの計量台部分で起きると、計量時のガタつきや基礎への接触などにつながります。
こうなると調整の段階で非常に時間がかかるだけでなく、ユーザー様への納品時に製造時と同じ精度が出せない可能性が高くなります。またガタつきがあるということは不安定な状態だということです。そのため納品後間もなく大きく精度が落ちるリスクもありますし、そうでなくても2年ごとに義務付けられている定期検査をクリアできない可能性が非常に高くなります。
加えて溶接部の耐久性も下がります。ダイトクではトラックのタイヤがよく通る部分により多くの溶接を施していますが、全体にひねりが生じてしまうと、トラックが乗り降りを繰り返すことによる溶接部の割れが発生しやすくなるのです。
精度が落ちるにせよ、修理が必要になるにせよ、スクラップ工場や産業廃棄物処理施設などを運営しているユーザー様は、一度営業をストップさせてダイトクなどのメーカーに調整や修理を依頼することになります。
すると手間や時間はもちろんですが、営業を止めることによる大きな損失を被ってしまいます。そのためトラックスケールにおける溶接は、できるかぎりひねりが出ないように決まった順番通りに行う必要があるのです。
しかし決まった順番と言っても、ダイトクのトラックスケールはユーザー様に合わせて作る完全オーダーメイド品。幅や長さもその都度少しずつ変わり、それに伴って守るべき溶接の順番も変わります。そのためひねりが出ないように溶接するには、長年の経験と技術が必要なのです。実際、以前試しに専門外の業者に外注してみたところ、使い物にならないくらいひねりが出たものが納品されてきました。
こうした難しさがあるので、ダイトクでは長年トラックスケール製作に携わってきた熟練工が溶接を担当しています。
「超極太の主桁」にこだわる理由
ダイトクのトラックスケールは計量台の鉄板にも十分な厚みのものを採用しています。以前海外製の非常に安いトラックスケール(非検定品)が市場に出回ったことがありました。
こうしたトラックスケールは取引に使用できないのはもちろんのこと、ダイトクのトラックスケールと比較すると紙のように薄く感じるはずです。重い荷物を載せたトラックが上を乗ったり降りたりすれば、いくら鉄の板でもたわみます。たわめばそれだけ精度が落ち、ロードセルの劣化も増します。鉄板が薄くなればたわみも大きくなりますからなおさらです。
しかし鉄板にある程度厚みのあるものを採用しても、たわみが生じないわけではありません。そこで重要になるのが主桁です。主桁とは写真のような地上型トラックスケールの場合は上部に、地中に埋め込む埋込型トラックスケールの場合は下部についている部品のこと。この主桁によって計量台のたわみを抑えているからこそ、トラックスケールの精度を維持できるのです。
とはいえ、主桁があればどんなものでもいいというわけではありません。主桁に計量台のたわみを抑えきれないような細いH鋼を使ってしまえば、当然精度が維持できなくなるからです。逆に太く強靭な主桁を備えているトラックスケールは、高い精度を長い期間維持し続けることができます。ダイトクでは海外製のトラックスケールはもちろん、国内他社と比べても太い主桁を採用していますが、それにはこうした理由があるのです。
「手作りの調整」で誤差ゼロを目指し続ける
トラックスケールの調整はアナログロードセルの場合、計量台に分銅を乗せ、その重量に基づいて和算箱を使って行います。ロードセルのコードがつながっている部分にはそれぞれ小さいつまみ(トリマ)が付いていて、このつまみ(トリマ)を精密ドライバーを使って回して抵抗値を変化させながら、正しい重量をトラックスケールに設定していくのです
このように書くと簡単そうに思えるかもしれませんが、実際は非常に細かい作業が必要です。なぜなら前述したようにトラックスケールには微妙なひねりやたわみがあるため、特に15mなどの長いトラックスケールの場合は、計量台のどこに分銅を乗せるかによって計量値が変わってくることがあるからです。こうした誤差も考慮に入れて調整する必要があります。
国によって定められている誤差の許容範囲を検定交差と呼びますが、ダイトクではこの検定交差に0.8倍をかけた数字を社内交差(合格の範囲)とし、より高いハードルを設けています。しかし製作チームではこの社内交差に甘んじず、誤差ゼロを目指し続けています。下表は実際に行った調整の結果です。
これを見れば、製作段階のダイトクのトラックスケールがどれだけ高い精度で作られているか、おわかりいただけるのではないでしょうか。なお下表のうち「器差」が誤差を、「増加」が分銅を乗せた時を指し、「減少」が分銅を降ろした時を指しています。
真の値(t) | 増加 | 合格の範囲(kg) | 減少 | ||
---|---|---|---|---|---|
表示値(kg) | 器差(kg) | 表示値(kg) | 器差(kg) | ||
0 | 0 | −1 | ±4 | 0 | +1 |
0.2 | 200 | −1 | ±4 | 200 | +1 |
5 | 5000 | −1 | ±3.2 | 5000 | +1 |
10 | 10000 | −1 | ±7.2 | 10000 | +2 |
15 | 15000 | −1 | ±6.4 | 15000 | +2 |
20 | 20000 | −1 | ±6.4 | 20000 | +2 |
25 | 25000 | −2 | ±9.6 | 25000 | +1 |
30 | 30000 | −3 | ±9.6 | 30000 | 0 |
35 | 35000 | −3 | ±8.8 | 35000 | −2 |
40 | 40000 | −4 | ±8.8 | 40000 | −2 |
なぜここまで高い精度を追求するのかというと、それがユーザー様のためになると考えているからです。トラックスケールの精度は出荷時は非常に高いですが、何年も使っているうちに徐々に下がっていく可能性があります。そのため出荷時にすでに検定交差や社内交差ギリギリの精度だったりすれば、早い段階で2年に一度の定期検査をクリアできなくなる可能性があるのです。
そうなれば先ほども説明したように、ユーザー様に手間と時間がかかるうえ、営業をストップさせることによる損失を与えることになります。だからこそ製作段階では誤差ゼロを目指して、繊細な調整を手を抜かずに行っておく必要があるのです。
まとめ
細部にまでこだわって丁寧に作ってきたからこそ、ダイトクのトラックスケールは多くのユーザー様から支持をいただいているのだと自負しています。とはいえ「もう十分だ」「もう完璧だ」とは考えていません。より高い精度のトラックスケール、より長持ちするトラックスケールを目指して、これからも精進を続けていく所存です。
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