はかりの検定などを行う計量検定所ですが、それ以外に何をしているところか、みなさんはご存知でしょうか。
実は日本国内の正しい計量は、この計量検定所によって支えられています。もし計量検定所がなければ、大阪のトラックスケールの精度と東京のトラックスケールの精度にズレが出たり、品質管理が全くできていないメーカーが堂々とはかりを売ったりと、計量の世界がむちゃくちゃになりかねません。
ここでは計量検定所の仕事の紹介を通じて、どうしてそんなことになるのかを解説していきます。
計量検定所は「計量の番人」
計量検定所(以下、検定所)は、主に日本国内の正しい計量を維持するための業務を担っています。具体的にどのような業務を行なっているかは都道府県の事情によって変わりますが、以下ではダイトクもお世話になっている大阪府計量検定所の業務をもとにして紹介していきます。
業務 | 内容 |
---|---|
登録業務等 | 特定計量器の製造・修理・販売事業者の届出の受理、計量証明事業者の登録、指定製造事業者の届出の受理、計量士の登録手続き、適正計量管理事業所の指定など |
指導業務 | 登録業者への指導、事業者や消費者への啓発活動など |
検定 | 各種特定計量器の検定業務 |
基準器検査 | 検定を行う機関、検査を行う事業者の「基準器」の検査 |
定期検査 | 2年ごとに行う特定計量器の精度の検査 |
計量証明検査 | 計量証明事業に使われている特定計量器の検査 |
立入検査 | 関係事業者への立入検査、指導 |
上表が大阪府計量検定所の主な業務です。取引や証明に使う特定計量器を作ったり、修理したり、販売したりするためには登録が必要です。精度も耐久性もむちゃくちゃな計量器を好き勝手に作ったり、売られたりすれば、誰も安心して取引できなくなるからです。
誰が特定計量器の製造ができるか、修理ができるか、販売ができるかを把握しているのも検定所なのです。
また一度登録できたからといって、その後もきちんとルールを守って事業を行うかは別問題です。そのため検定所では、計量管理大会・研修会・講習会等を主催して、事業者が計量制度に関する知識の習得、技術の向上ができるような場を設けてもいます。
正しい計量を守るために、各事業者がルールを理解し、守っているかをチェックする−−−これが計量の番人である検定所の仕事です。以下では登録業務等、指導業務以外の検定・検査業務について、もう少し詳しく見ていきましょう。
正しい計量を守るための「検定」
大阪府計量検定所が検定を行なっている特定計量器の種類は以下の通りです。
特定計量器 | 検定の有効期限 |
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タクシーメーター | 1年間 |
質量計 | 2年を超えない期間に1度定期検査が必要 |
燃料油メーター | 7年間 |
液化石油ガスメーター | 4年間 |
アネロイド型血圧計 | なし |
※検定所が検定を行う特定計量器の種類は、都道府県によって変わります。
機械式もしくは電気式で血圧を計測するアネロイド型血圧計以外の特定計量器に関しては、基本的に検定に有効期限があり、期限が切れればその都度検定を受ける必要があります。
もしこうして検定所が検定を行なっていなければ、「実際の距離よりも少し長く計測するタクシーメーター」「実際の重さよりも若干重く計量する精肉店のはかり」「実際よりも多く計量される燃料油メーター」などがあちこちに生まれることになります。いずれも事業者にとっては得ですが、消費者にとっては損です。
検定所の検定は、私たちのビジネスや生活を縁の下で支えてくれているのです。
検定所が行う4つの検査
また検定所は検定とは別に、各種検査も実施しています。以下では大阪府計量検定所が実施している4種類の検査について見ていきましょう。
基準器検査
基準器とは、取引・証明に使われている特定計量器の精度をチェックするために使われる計量器のことです。例えばタクシーメーターならタクシーメーター装置検査用基準器と呼ばれるもの、トラックスケールなどのはかりであれば、一定の基準をクリアした分銅などが基準器として使われています。
もしこの基準器の精度がズレていれば、どんなに正確に特定計量器の精度をチェックしても、本当に正しい計量結果は出ません。結局前述したような「実際の距離よりも少し長く計測するタクシーメーター」などが生まれてしまいます。
定期検査
取引や証明に使用する「はかり」に対して、2年を超えない期間に1度行われる検査が定期検査です。どんなに正確に作ったはかりでも、時間が経ち、繰り返し使用を重ねていくことで、ほんの少しずつ精度が落ちていきます。
これを放置していれば、「実際の重さよりも若干重く計量する精肉店のはかり」などが生まれてしまいますから、定期的にチェックをしてメンテナンスや買い替えが必要かどうかを検討するのです。
行政が行うのが「定期検査」で、ダイトクを含めたメーカーや計量士が行う検査を「代検査」と呼びます。両者の違いについては違いはどこにある?トラックスケールの精度を保つために必要な定期検査と代検査で詳しく解説しています。
計量証明検査
計量証明事業に使われている特定計量器の検査が計量証明検査です。計量証明事業とは、公に「この計量結果に間違いない」と伝えたりするのを事業として行うことをいいます。
本来は他社の計量結果を証明する事業を指しますが、近年は自社の取引にしか計量器を使用しない場合でも、入札や取引などで自社の計量器の正確性・公平性、適正な管理などをアピールするために、計量証明事業登録をする事業者も増えています。
立入検査
関連事業者などに直接立入検査を行います。
例えばタクシーメーターや燃料油メーター、はかりなどの特定計量器をチェックして、検定や定期検査の有効期限が切れていないかをチェックしたり、スーパーマーケットなどで特定計量器が正しく使われているかをチェックしたりするほか、正しく計量方法の指導を行う場合もあります。
貸しビルやマンションには電気・水道・ガスメーターが設置されていますが、各部屋の子メーターのチェックを検定所が行うこともあります。いずれも計量の番人として、正しい計量を守るために必要な検査です。
まとめ
計量検定所の業務内容には、都道府県ごとに差がありますが、いずれの場合も正しい計量を守るための重要な業務を行なっています。ダイトクは一製造事業者として、計量検定所の業務に従い、サポートする立場にあります。
ダイトクマガジンは第一にダイトクのことを多くの人に知っていただくためのものです。しかし同時に、はかりを扱ううえでとっても大切な検定と検査の話や分銅とトラックスケールの深い関係とは?などの記事を見ていただければわかるように、正しい計量の大切さを知ってもらうための情報も発信しています。
ぜひこれらの記事にも目を通していただいて、奥深い計量の世界を覗くとともに、正しい計量の必要性についても知っていただければ幸いです。