日々業務の中でご利用いただいているトラックスケールも、実は少しずつ技術が進歩しています。ダイトクでも時代やユーザー様の要望に合わせて、技術のレベルアップに努めてきました。

今回はその歩みを概観するとともに、「技術がもっと進歩したとき、トラックスケールはどう変わっていくのか?」について考えてみたいと思います。

INDEX
  1. トラックスケールの技術は進歩している
  2. 技術がもっと進歩したらトラックスケールは要らなくなる?
  3. まとめ

トラックスケールの技術は進歩している

機械式トラックスケールの時代

規格台秤

トラックスケールの公正な取引での役割と種類・構造について詳しく解説でも紹介したように、初期のトラックスケールは、テコの原理を応用した高い精度の機械式台ばかりである規格台秤(きかくだいひょう)の仕組みを転用して作られました。

こうしたトラックスケールは機械式トラックスケールと呼ばれ、現在のロードセルを用いた電気式トラックスケールが誕生する前は、トラックスケールと言えば機械式トラックスケールのことでした。

しかし機械式トラックスケールを製造・調整するためには、メーカー側にテコの構造をたくさん重ねても精度を維持する技術を持つ職人が必要で、その数はどんどん減少しています。そのためダイトクも含めて機械式トラックスケールを新しく作るメーカーはなくなってしまいました。

機械式×電気式トラックスケールも製造可能

といっても、機械式トラックスケールをご利用いただいているユーザー様はいらっしゃいますし、現役の特定計量器として活躍もしています。

なぜなら適切な調整さえできれば、機械式トラックスケールは電気式トラックスケールに勝るとも劣らない精度を出せる他、何十年も使い続けられる高い耐久性を誇るからです。古いものは古いなりに、きちんと強みがあるのです。

かつてダイトクはユーザー様のご要望にお応えして、計量台に載れば指示計に重量が表示されるという電気式トラックスケールの使いやすさと、小さな分銅でも精度がチェックできるという機械式トラックスケールのメリット(※)を兼ね備えた、ハイブリッドなトラックスケールを開発・製造していたこともあります。

技術として古くなったからといって、全てが必要なくなるわけではありません。各時代の技術の良さをしっかりと理解して、次の時代の技術に生かすのも、70年近い歴史を持つダイトクとしての務めだと考えています。

なお現在の計量基準では機械式トラックスケールを電気式に改造して検定を受検する事はできなくなりました。また、技術や部品の問題で修理も難しいため、故障の際は電気式トックスケールに入れ替えていただいています。

※機械式トラックスケールはテコの構造を多用することで、大きな重量を持つ計量物を、小さな重量の分銅と釣り合わせて計量していました。そのため数百kg、数tを計量する際の精度チェックも、手で持てる重さの分銅で十分だったのです。これに対して、電気式トラックスケールの場合は、数百kg、数tの分銅が必要になるため、ユーザー様自身でのチェックは難しくなります。

コンピュータによる機能の拡張

コンピューター

機械式から電気式への進歩を遂げたトラックスケールですが、今ではもっと大きな進歩を遂げています。例えばトラックスケール向け計量システムにできることでも紹介しているように、コンピュータを介して顧客情報の管理や原材料別単価管理、納品書・請求書の作成、運送費管理など様々な作業を一瞬にして処理できるようになっています。

またメーカーによってはトラックスケールの精度についての自己診断機能や偏荷重の検知機能が搭載されているものもあります。自己診断機能とは計量エラーの履歴や異常値の記録をコンピュータが分析し、ロードセルの動作状態が確認できたり、故障時の原因解明に利用できたりする機能のことで、偏荷重の検知機能は軸重量・輪重量をもとに荷重を分析し、警告などを出す機能です。

こうした技術の進歩は今後も続き、よりユーザー様にとって使いやすく、便利なトラックスケールになっていくはずです。

技術がもっと進歩したらトラックスケールは要らなくなる?

非接触センサーによる計量は実現するか?

センサー

ここで少し想像を巡らせて、未来のトラックスケールについて考えてみましょう。例えばスマートフォンなどに活用されている非接触センサ(近接センサ)は、直接物体に触れることなく距離の遠近、明るさ、物質などの検知を行い、その情報に基づいて機械を動かしたり、分析をしたりすることが可能です。

今後自動運転の技術などがより発達すれば、非接触センサの役割はどんどん大きくなっていくはずです。ではこの非接触センサが、質量の計量にも応用されたとしたらどうでしょうか。もしこれが実現すれば、何かレーザーのようなものを計量物に当てるだけで、計量が終わってしまう時代が来るかもしれません。

現在トラックスケールでの計量は、荷物を載せたトラックが一度計量台で計量し、荷物を降ろした後に再度計量することで、荷物の計量を行なっています。しかし非接触センサによる計量が現実になれば、ただセンサの前を通り過ぎるだけで計量が終了してしまうのです。

するとトラックスケールを設置するための基礎工事も不要になり、計量台を作る必要もなくなります。納期やコストが大幅にカットされるのは間違いないでしょう。

質量の計量は難しい

確かに物の重さ(質量)は、その物を構成する原子の重さ(比重)とその数(体積)が分析できれば、「比重×体積」の計算で導き出すことができます。これさえ実現できれば、前述したような未来も夢ではなくなります

金属スクラップ

しかし正方形の鉄の塊を計量するのであればともかく、様々な物質を混ぜて作られる合金を、あちこちに隙間のある状態でトラックに積み込まれたスクラップなどを計量するとなると、話はそう簡単ではありません。色々な物質が混ざれば比重も変わりますし、隙間があればその隙間の体積を全体から差し引いたうえで計量する必要が出てくるからです。

そのため、どんな物質で構成されているかを正確に分析し、荷物の体積を正確に測定できるようになり、そこから正確な質量を導き出せるようになるには、もっとずっと長い時間とたゆまぬ技術革新が必要になるのです。

今後も高精度な設計・製造は変わらず重要

確かに非接触センサのような最新技術は、無限の可能性を秘めています。もしかしたら、10年後には家庭用の体重計が非接触センサによるものになっているかもしれません。

トラックスケールに乗るトラック

しかし特定計量器レベルの精度を持つ計量器になると、前述したような技術の進歩が必要になるため、まだ当分先のことになるでしょう。現状、スクラップなどの計量を行う際は、計量物を計量台に載せて計量した方が、圧倒的に早く、圧倒的に正確です。

このように考えてみると、今後技術が進歩していったとしても、現在ダイトクが全力を注いでいる高精度な設計や製造といったある意味で昔ながらの技術は、今後もまだまだ重要であり続けると言えるでしょう。

ダイトクは今後も、ユーザー様に喜ばれるような製品・サービスを提供していくためにこの技術を受け継いでいきます!

まとめ

最新の技術を取り入れ、ユーザー様にとってより便利で、安価で、精度の高いトラックスケールを提供していくのは、スケールメーカーとして当然の務めです。しかしそうした技術にかまけて、長い目で見た時にユーザー様にとって最もメリットがあるような製品・サービスを提供するという、最も重要な部分をおろそかにしてはいけません。

このことを従業員一同心に刻み、これからも日々精進していく所存ですので、今後ともダイトクをよろしくお願いいたします。

もしトラックスケールの技術が変わっていったとしても、ダイトクの「お客様第一主義」は変わりません!