世界で使われる単位(国際単位系)を維持するために、世界数十カ国の加盟国によって開催される国際度量衡総会。実は2018年11月に開かれたこの会議で、約130年ぶりにキログラムなどの4つの単位の定義が改定されることが決まっていました。

この際新しい定義を使い始める日として定められたのが、2019年5月20日です。そう、すでにキログラムの定義は変わってしまっているのです。ここではこれまでの1kgとこれからの1kgの違いを簡単に解説するとともに、定義の改定によって起きる変化についても解説します。

5月20日、1kgの定義が変わった!

これまでの1kgの定義

国際キログラム原器

2019年5月19日までの1kgの定義は、分銅とトラックスケールの深い関係とは?でも紹介した「国際キログラム原器」というモノでした。これは1879年に作られた、直径・高さともに約39mmのプラチナ90%イリジウム10%の円柱体です。

この国際キログラム原器を親として、日本キログラム原器をはじめとする各国の1kgの基準が作られてきたのです。日本ではこの日本キログラム原器から、国際的なスタンダードである校正用標準分銅や、日本国内のスタンダードである特級基準分銅などが作られてきました。

どうして定義を変える必要があったのか?

しかし国際キログラム原器を基準とするやり方には一つ大きな問題がありました。それは少しずつ重さ(質量)が変化しているという問題です。

確かに国際キログラム原器は当時の最新技術をフルに活用して作り上げた「不変」のモノでした。しかも重さを維持するためにガラスの透明な容器に入れ、その容器を3つも鍵がついた金庫に入れ……と空気や人の手に触れないように守られてきました。こうして慎重に取り扱いさえすれば10万年は不変の基準として機能するとさえ言われていたのです。

ところがこの130年の計測技術の発達により、すでに国際キログラム原器の質量は変化してきており、重さ(質量)の基準としては危ういことがわかってしまいました。その結果、世界中の研究機関の協力のもと、今回の定義の改定が行われたというわけです。

今回の定義の改定には、日本の研究機関である産業技術総合研究所が大きく貢献したそうですよ。

これからの1kgの定義

数字

ではこれからの1kgは何で定義されるのでしょうか。答えはプランク定数です。すなわち「6.62607015×10のマイナス34乗ジュール・秒(Js)」がこれからの1kgの定義となります。

こう言われて「なるほど!」と思える人はいないでしょう。おそらくダイトク社員の中にもほとんどいません。この定義は他にも様々な数字に言い換えることができますが、どれも一般的にはわかりづらく、直感的に理解できるようなものではないのです。

しかしわかりづらい代わりに、この定義には、国際キログラム原器のように変化することがなく、永遠に不変であり続けるという非常に大きなメリットがあります。今回の定義の改定で最も重要なのは、この「変化する可能性がある国際キログラム原器から、変化する可能性のないプランク定数に変わった」という点だと言えるでしょう。

定義が変わると何が変わる?

生活レベルでは何も変わらない

重さ(質量)の定義の改定が私たちの生活にどのような影響を及ぼすのかというと、実は生活レベルでは何も変わりません。なぜなら、何も変わらないように各国間のルールや、各国内のルールを慎重に変えていくからです。

体重計

そうでなければ「5月19日までは1トンだった鉄スクラップが5月20日から9,000kgになった」とか「5月19日までは体重が80kgで肥満と判定されていたのに、5月20日になったら体重が70kgになって普通体重と判定された」といった事態が起きかねません。このような事態を回避するためにも、生活レベルには何の影響も出ないように変更を加えていくのです。

法令レベルでは変更が加わる可能性あり

一方で法令レベルにおいては、今後何かしらの変更が加えられる可能性があります。例えば検定や定期検査で使用する分銅の精度の基準が変わったり、それに伴って特定計量器としての合格基準が変わったりするかもしれません。

そうなればはかりメーカー各社は、そうした変更に柔軟に対応し、法令を遵守した事業を継続する努力を求められることになるでしょう。

まとめ

今回のキログラムの定義改定に伴って、今後日本の法令にも何かしらの変更が加えられると思われます。

そうなればはかりメーカーにも体制の変更などが求められる可能性は十分あります。ダイトクはそうした変化にも柔軟に対応し、確実に法に準じた事業を継続していきますので、今後ともご愛顧のほどよろしくお願いいたします。

ダイトクのスケールは、今後もずっと安心してお使いいただけます!