トラックスケールや台ばかりなどのはかりに使われているロードセルは、正確な計量をするための要となる部品です。このロードセルには大きく2種類あって、一つをデジタルロードセル、もう一つをアナログロードセルと呼びます。

どちらも高い精度の出るロードセルではありますが、この2つの違いを理解したうえではかりを選ぶのと、理解せずに選ぶのとでは、その後のメンテナンスなどにも違いが生じます。

ここではデジタルロードセルとアナログロードセルの仕組みを解説するとともに、それぞれの長所と短所についても解説。それらを通じて、両者の違いがその後のメンテナンスなどにどのような影響を及ぼすのかを知っておきましょう。

INDEX
  1. デジタルとアナログの仕組みの違い
  2. デジタルロードセルの魅力と問題点
  3. アナログロードセルの魅力と問題点
  4. ダイトクがアナログロードセルを選ぶ理由
  5. まとめ

デジタルとアナログの仕組みの違い

デジタルロードセルとアナログロードセルの仕組み上の違いを細かく説明しようとすると、少しややこしくなってしまうため、ここではごく簡単に解説しておきます。

デジタルロードセルとアナログロードセルの違い

デジタルロードセルはずっとデジタル数値

デジタルロードセルの仕組み上の特徴は、各ロードセル内に回路が組み込まれている点です。これにより負荷が生じると各ロードセル内で出力電圧値をデジタル数値に変換することができます。

デジタルロードセルはこのデジタル数値を指示計とロードセルをつなぐ接続箱へと送り、接続箱はデジタル数値を指示計へと送ります。したがって、デジタルロードセルを採用した場合、負荷が生じてから指示計に表示されるまでの間、データは常にデジタル数値として扱われることになります。

アナログロードセルは指示計でデジタル数値になる

デジタル数値

一方、アナログロードセルにはデジタルロードセルのような回路が組み込まれていません。そのため各ロードセルで感知された負荷は出力電圧値として読み取られ、和算箱に送られます。和算箱内で文字通り合計された出力電圧値は指示計へと送られ、指示計の中でデジタル数値に変換されます。

このようにアナログロードセルを採用した場合は、負荷が生じてから指示計に表示されるまでの間で、データは出力電圧値からデジタル数値に変わっていくのです。

ちょっとした違いなんですが、これがけっこう大きな違いなんです。

非常に大雑把ではありますが、以上がデジタルロードセルとアナログロードセルの仕組み上の違いです。以下ではこれを踏まえたうえで、デジタルロードセルとアナログロードセルそれぞれの魅力と問題点を見ていきましょう。

デジタルロードセルの魅力と問題点

メーカー側にメリットが多いデジタルロードセル

・仕組み上スケールの調整が楽
・パスワードの設定が可能
・落雷への耐久力が高い

デジタルロードセルの魅力として挙げられるのは、上記の3点です。このうち「仕組み上スケールの調整が楽」「パスワードの設定が可能」の2点については、メーカー側にとっても大きなメリットになっています。以下で詳しく解説していきましょう。

□仕組み上スケールの調整が楽

デジタルロードセルは各ロードセルがそれぞれの感知した負荷を数値データにして接続箱に送るため、指示計でどのロードセルにどれだけの負荷がかかっているかが直ちに把握できます。そのためスケールの調整をする際も、どのロードセルがどういった数値を計量しているのかが一目でわかります。

また実際の調整も指示計上の操作で完結します。したがって、デジタルロードセルを採用した場合は、調整時の時間短縮・労力削減が期待できるのです。

これはユーザー様側のメリットにもなりますが、メーカー側にとっても1台あたりの作業時間が短縮できるうえ、比較的技術や経験が少なくても調整作業ができるため、人的コストの削減にもなります。

本当のことを言うと、デジタルにした方が私たちは楽ができるんです(笑)

□パスワード設定やシリアル番号設定が可能

デジタルロードセルは調整時にパスワードを入力するよう設定することができたり、個々のロードセルのシリアル番号を登録することが可能です。これは担当するスケールメーカー以外が勝手に調整や交換ができないようにする意味合いもあります、

これはユーザー様のためのメリットというよりは、メーカー側のメリットになる特徴となっています。

□落雷への耐久力が高い

トラックスケールをはじめとして、スケールの多くは電子機器です。そのため落雷を受けると故障の可能性は高くなりますが、デジタルロードセルの場合は予備の回路が搭載されているため、万が一落雷があっても一度で故障してしまうということはありません。

したがって落雷の多い立地にスケールを設置する場合は、デジタルロードセルの方が安心感が高くなります。

問題点はコストとメンテナンス性

・コストが高くなりやすい
・他メーカーでのメンテナンスができない場合がある

一方でデジタルロードセルの問題点として挙げられるのはコストとメンテナンス性です。以下ではそれぞれについて見ておきましょう。

□コストが高くなりやすい

飛んでいくお金

デジタルロードセルはアナログロードセルには内蔵されていない回路があるぶん、単純に1つあたりのコストが高くなります。その結果として、製品価格も高くなる傾向があるのです。できるだけ導入コストを下げたいというユーザー様にとっては、この点はデメリットになるでしょう。

□他メーカーでのメンテナンスができない場合がある

あるメーカーがパスワードやシリアル番号の設定・登録ができるということは、そのパスワードを知らない他メーカーでは調整ができないということです。

また一般的なアナログのロードセルはよく流通しているため、どこのメーカーのものであっても入手可能ですが、デジタルロードセルはメーカー独自の回路を組んでいるケースがあり、他社では入手・操作ができない場合も少なくありません。

確かに定期検査を受ける程度であれば緊急性がないため、問題はないでしょう。しかし突然の故障で、しかもパスワードを設定したメーカーが対応できない場合、ユーザー様は途方に暮れる他ありません。これはデジタルロードセルの抱える大きな問題点と言えます。

デジタルロードセルはメンテナンス性が高いのか?

?とビジネスマン

このように考えると、デジタルロードセルのメンテナンス性は「調整がしやすい」という意味では高いものの、「他メーカーでは操作できない場合がある」という意味では低いと言わざるを得ません。

ロードセルを使ったスケールはユーザー様の事業の根幹を担っている場合も多いため、緊急時に他メーカーでは対応ができないとなると、対応が受けられるまでの間の損失は大きくなる一方です。

また、1社対応であるが故にたとえ簡単な調整や修理であっても他社からの修理見積りが困難になり、コストが高くなってしまう可能性もあります。

このような事態を未然に防止できるのが、アナログロードセルです。以下ではアナログロードセルの魅力と問題点について説明していきます。

アナログロードセルの魅力と問題点

コストとメンテナンス性において優秀なアナログロードセル

・より低価格でのスケールの提供が可能
・万が一の時は他メーカーでも対応可能

アナログロードセルのメリットは「コスト」と「メンテナンス性」です。以下でそれぞれについて見ておきましょう。

□より低価格でのスケールの提供が可能

貯金箱と札束

アナログロードセルにはデジタルロードセルのような回路が組み込まれていないため、1つあたりの価格は安くなっています。そのためロードセルの価格だけで言えば、アナログロードセルを採用したスケールの方が低価格で提供できるのです。

□万が一の時は他メーカーでも対応可能

デジタルロードセルに実装されているパスワード設定機能は、アナログロードセルにはありません。そのため現時点で取引をしているメーカーが何らかの都合で万が一メンテナンスに対応できない場合でも、他メーカーに対応してもらうことが可能です。

これはメンテナンスのスピードが損失の大小に直結するスケールにおいては、非常に重要なメリットです。

ユーザー様にとっては安心感がありますよね。

問題点は調整の難しさ

・迅速かつ確実な調整には技術と経験が必須
・落雷の多い地域は要注意

一方でアナログロードセルのデメリットは調整の難しさと落雷への耐久力です。こちらもそれぞれ詳しく説明しておきましょう。

□迅速かつ確実な調整には技術と経験が必須

精密ドライバー

アナログロードセルを採用したスケールの調整は、デジタルロードセルを採用したスケールのように指示計を操作するだけでは終わりません。仕組み上、どのロードセルがそんな数値を計量しているかがわからないため、指示計に出力される数値を見ながら、和算箱を使って微調整していく必要があるからです。

和算箱の中にはロードセルのコードがつながっており、その部分には各ロードセルごとに小さいつまみ(トリマ)が付いています。このつまみを精密ドライバーを使って回し、抵抗値を変化させながら、正しい重量をトラックスケールに設定していくのです。

非常に繊細な作業になるため、迅速かつ確実な調整をするためには技術と経験を備えた熟練工が必要になります。これは「メーカーを選ぶ」という意味でユーザー様側のデメリットでもあり、「人的コストがかかる」という意味でメーカー側のデメリットでもあります。

□落雷の多い地域は要注意

またアナログロードセルは予備の回路があるデジタルロードセルと違い、落雷を受けた際に電流を受け流す回路がありません。そのため指示計や和算箱への落雷の影響を直接的に受けます。

したがって一度でも雷が落ちると、その時点で故障してしまうのです。この点は落雷の多い地域において、デメリットになるかもしれません。

ダイトクがアナログロードセルを選ぶ理由

お客様第一だからこその選択

ダイトクではユーザー様に対してアナログロードセルを採用したスケールをご提案することが多くなっています。その理由の一つは、ダイトクが常にお客様第一を考えているからです。

なぜならトラックスケールをはじめとして、スケール製品は決して安いものではないからです。だからと言って導入せずに済ませられるというものでもありません。そのためダイトクではできるだけ安く製品を提供するために、アナログロードセルをご提案しているのです。

また前述したようにデジタルロードセルは緊急時にダイトクが対応できない場合、ユーザー様にご迷惑をかけてしまう可能性があるからです。

確かにパスワードによって囲い込みを行えば、ダイトクの利益は確保できるかもしれません。しかしそれはユーザー様の利益には決してなりません。最悪の場合、ユーザー様に他メーカーを頼っていただけるという面でも、ダイトクはアナログロードセルを採用しています。

ユーザー様の利益にならないことはやりません!

丁寧な「手作りの調整」も迅速に行える体制

溶接作業

アナログロードセルのデメリットとして調整の難しさを挙げましたが、逆に言えば迅速かつ確実なアナログロードセルの調整ができれば、コストやメンテナンス性といったメリットをユーザー様に提供できるということです。

そこでダイトクでは経験豊かな熟練工を雇用・育成し、調整の難しいアナログロードセルを採用したスケールでも、できるだけ迅速かつ確実に調整ができる体制を整えています。この体制が確立できているからこそ、ダイトクは自信を持ってアナログロードセルをご提案できるのです。

まとめ

デジタルロードセル、アナログロードセル、いずれにも魅力があり、問題点があります。ダイトクも状況やお客様の要望次第ではデジタルロードセルを使うケースがないわけではありません。

「この記事を読んではみたけど、やっぱりどっちがいいかわからない」という方は、ダイトクが専門家の視点からベストな選択肢をご提案させていただきます。ぜひ一度ご相談ください。

皆様からのお問い合わせをお待ちしております!