1912年4月15日午前2時20分、当時世界最大の旅客船であり、不沈船と呼ばれるほどの安全対策を施していたはずのタイタニック号は、船体中程から轟音とともに真っ二つに折れ、その船体を北大西洋ニューファンドランド沖に沈めました。原因には様々な説がありますが、安全管理に対する体制の甘さがその一つとして挙げられています。

このタイタニック号海難事故を受けて制定されたのが、海上人命安全条約(SOLAS条約)です。船舶の安全性確保のための規則を定める多国間条約で、日本では2015年時点で全111カ所の港湾が指定港湾とされており、一般人の立ち入りを禁止しているほか、様々なルールが定められています。

そのルールの一つが「総重量申告の証明」です。これは2016年7月の改正で盛り込まれたものですが、今回はそのきっかけとなった海難事故を紹介するとともに、改正内容について詳しく解説。同時にこのルールを守るための対策についても解説します。

INDEX
  1. SOLAS条約改正のきっかけになった海上事故
  2. 2016年7月のSOLAS条約改正の内容とは?
  3. 正確な計量は精度の保証された計量器で!
  4. まとめ

SOLAS条約改正のきっかけになった海上事故

救助ヘリ

2016年7月の条約改正のきっかけになったのは、2014年4月16日に朝鮮半島の南西、全羅南道珍島郡の観梅島沖海上で沈没したセウォル号の沈没事故でした。

この海上事故もタイタニック号同様、運航会社と船員の安全管理体制、不適切な船体改造と船体検査制度の不備などの様々な原因が指摘されていますが、その中の一つに過積載とそれにともなうバラスト水の不適切操作があります。

セウォル号の本来の貨物量上限は987トン(うち車両は150台)とされていましたが、最終的には大型トレーラーを含む車両だけで2,451トン、さらには鉄製タンクや鉄筋などの貨物で1,157トン、合計3,608トン(上限の3.6倍)を積んでいました。

しかも荷物を積み込む目的で、船体を安定させるために船底に積むバラスト水の大半を抜いてしまっていたのです。

結果、セウォル号は航行中に横倒しになったのち沈没し、乗員乗客476人のうち299人が死亡、5人が行方不明、加えて韓国海軍兵1人、民間ダイバー2人、消防隊員5人が死亡しました。

2016年7月のSOLAS条約改正の内容とは?

こうした凄惨な事故に加え、世界各地でコンテナ貨物総重量の誤申告や虚偽の申告が原因で起きる荷崩れ事故が相次いだことがきっかけとなり、SOLAS条約は2016年7月の改正に至ります。

国土交通省が同年に発表した「国際海上輸出コンテナの総重量の確定方法ガイドライン」によれば、今回の改正ではコンテナの総重量を把握するための手順に項目が追加されています。すなわち下表のとおりです。

従来の手順 1.荷送人は、以下の内容を含む貨物情報を含む資料を船長(又は代理人)に提供。
・貨物の概要
・貨物または貨物ユニットの総重量
・運送に関連する貨物の特性
2. 荷送人は、船積み前に貨物ユニットの総重量が船積書類に記載されているものと一致することを確認。
追加された手順 3. 荷送人は、コンテナ貨物については、以下の2通りの方法で総重量を証明。
・調整・証明済み装置を用い、実入りコンテナの総重量を計測
・国が承認した方法により、コンテナの自重・貨物・パレット等の重量を足し合わせる
4. 荷送人は、上記方法で計測されたコンテナ総重量の船積書類への記載を確認。
5. 荷送人からコンテナ総重量の情報提供がなく、船長(その代理人)及びターミナル代表者がコンテナ総重 量を入手していない場合は、当該コンテナの船積禁止。

こうして見ると複雑な手順を踏んでいるように感じるかもしれません。しかし端的に言えば今まで以上に正確にコンテナの重量を計量すべしという内容です。

そのため必要以上に難しく考える必要はありませんが、海上および荷下ろし後の陸運においての安全管理のために、今回の改正内容はきっちりと守られるべきでしょう。

ただし、荷送人自身がコンテナの総重量を認証および確定する場合、その荷送人は国土交通大臣への届出を出しておかなければなりません。

さらにコンテナの総重量の確定を乙仲業者や計量証明事業者などの第三者に委託するのであれば、その第三者は国土交通大臣への登録が必要になります。

正確な計量は精度の保証された計量器で!

トラックスケール地上型写真

国土交通省のガイドラインは、総重量を確定させるために使用するべき計量器についても定義づけています。

ガイドラインが認めている計量器には2種類あり、そのうちの一つが国の基準をクリアしていて、取引や証明に使うことが認められている特定計量器です。ダイトクのトラックスケールはまさにこの特定計量器であるため、SOLAS条約に基づいた計量に利用できます。

もう一つは次の2つのうちいずれかに該当する計量器です。

1.計量器の製造事業者・修理事業者・販売者が点検・調整し、計量器の製造事業者・修理事業者・販売者が定めるところにより性能を保証し、器差が±5%の範囲内である計量器。
2.計量器を管理している者が定期的に点検・調整し、器差が±5%の範囲内である計量器。

これはつまり、ダイトクなどのトラックスケールメーカーやその修理業者などが定期的に検査をして、精度を保証している計量器だということです。

まとめ

少しの誤申告でも、それが積み重なればコンテナの荷崩れ事故につながります。最悪の場合はセウォル号のような歴史に残る大事故につながる可能性さえあります。同じ過ちを繰り返さないためにも、精度の高いトラックスケールを用いた、正確な計量を徹底しましょう。

また、トラックスケールの設置やトラックスケールでの計量が困難な場合は、コンテナに積み込む荷物を台はかりで個々に計量してその値を合算するといった方法も可能です。

そうしたケースバイケースの対応は、ダイトクに相談いただければ、ニーズに合ったご提案をさせていただくことができます。

ダイトクでは港湾地域へのトラックスケールの設置はもちろんのこと、様々な状況に応じた設置工事が可能です。ぜひご相談ください!