計量証明事業とは計量証明を事業として行うことであり、計量証明とは長さや質量などを法律で決められた単位(メートルやグラムなど)によって計量した結果について、公に表明したり、計量結果に間違いないということを業務上伝えたりすることを言います。この計量証明を事業として行う場合は、事業内容に応じた都道府県への登録が義務付けられています

ここではこれから計量証明事業を始めようという事業者に向けて、計量証明事業登録に必要な資格・書類を紹介するとともに、すでに事業をスタートさせている事業者も含めて、近年計量検定所から指導されている計量証明書作成時の注意点について紹介します。

なお本来の計量証明事業は自社だけではなく他社の計量に介在し、その結果を証明することを指します。したがって自社の取引にしか計量器を使用しない場合は、計量証明事業所の登録は不要です。

ただし、実際のところ入札案件や取引条件などで計量証明事業所の取得を義務付ける場合もあるようです。そのため「うちは自社の計量だけだよ」というケースでも、ここで解説する内容を踏まえたうえで登録の仕方について理解しておくことをおすすめします。

INDEX
  1. 計量証明事業登録に必要な資格・書類
  2. 計量証明書作成時の注意点
  3. 計量証明事業者登録後の立入検査
  4. まとめ

計量証明事業登録に必要な資格・書類

計量証明事業の種類

書類をチェックする女性

計量証明事業登録をするには、まず自社の事業内容がどの計量証明事業に分類されるのかを知る必要があります。計量証明事業には大きく一般計量証明事業環境計量証明事業の2種類があります。

このうち一般計量証明事業は運送や寄託、売買を目的とする貨物の積み下ろしや入出庫の際に、その貨物の以下の要素について計量証明を行う事業を指します。

・長さ
・質量
・面積
・体積
・熱量

これに対して環境計量証明事業は、水・大気・土壌中の物質の濃度・音圧レベル・振動加速度レベルの計量証明を行う事業を指します。

ただしこのうちダイオキシン類の濃度に関しては特定濃度と呼ばれており、この濃度の計量証明を行う事業は特定計量証明事業に分類されます。この特定計量証明事業に関しては、認定機関等の認定を受けたうえで都道府県への登録が必要です。

登録には計量士か一般主任計量者の資格が必要

計量証明事業の種類が決まったら、次に考えるべきは必要な資格の取得です。一般計量証明事業の場合は国家資格である一般計量士か各都道府県の知事が実施する試験に合格した一般主任計量者の資格が、環境計量証明事業の場合は環境計量士の資格が必要になります。

ただし環境計量士の資格は濃度関係と振動・騒音関係で資格が分かれているため、それぞれに応じた資格の取得が必要です。

トラックスケールなどの質量計を使った計量証明は一般計量証明事業となりますが、国家資格である一般計量士はハードルが高いので一般主任計量者の資格を取得するケースが多いです。
事業の区分 経済産業省で定める条件
一般計量証明事業 一般計量士か一般主任計量者の試験に合格している。
環境計量証明事業
(濃度関係)
環境計量士(濃度関係)の国家試験に合格している。
環境計量証明事業
(振動・騒音関係)
環境計量士(振動・騒音関係)の国家試験に合格している。

一般主任計量者の試験は各都道府県で行われていますが、日程や頻度はバラバラで、2か月毎に行っている自治体もあれば、半年に一回しか行っていない自治体もあります。ただし一般主任計量者の資格自体は全国共通のものなので、試験はどこの自治体で受験しても問題ありません

だいたい平日の午後に実施され2時間~3時間の講習の後に1時間程度で試験を行うケースが多くなっています。しっかり講習を聞いていれば合格自体は難しくありませんが、合格していなければ事業者としての登録はできないため、あらかじめ受験しておきましょう。

また一般主任計量者取得後も5年毎にフォロー講習が行われている都道府県もあり、講習では法改正の内容説明など適正計量に必要な情報を教えてもらえます。連絡が来た場合は受けるようにしましょう。

登録に必要な書類

一般計量証明事業 環境計量証明事業
計量証明事業登録申請書
計量証明書のサンプル
事業規定届出書
事業規定
登録の欠格事由に該当しない旨の誓約書
履歴事項全部証明書(法人登記簿謄本)
又は住民票の原本(発行から3ヶ月以内)
事業所の位置図・見取り図
特定計量器の検定成績書の写し(製造又は修理事業者が発行したもの)
又は定期検査成績書の写し
※計量器購入後すぐに届出する場合は検定成績書を、数年使用して何回か定期検査を受けた場合は直近の定期検査成績書を提出。
計量証明対象物質の計量方法及び機器又は装置を記載した書面
※検定証印の有効期限がある特定計量器の場合は「検定済証」の写し
※濃度計、Ph計の場合は特定二次標準物質の「Jcssのマーク付きの証明書」の写し
一般計量士登録証写し
または一般主任計量者試験合格証の写し
計量士登録証の写し
「知識経験を有する者」の場合はその旨を証明する書面の写し
特定計量証明事業の場合は認定機関による認定を証明する書面の写し

登録時に必要な書類はおおむね上表の通り。ただし実際の提出書類については各自治体によって少しずつ違いがあるため、適宜問い合わせるようにしてください。

登録には手数料も必要

計量証明事業者の登録をする場合は、収入印紙の形で手数料を納付する必要があります。金額は都道府県によって少しずつ変わりますが、概ね50,000〜55,000円以内となっています。

なお登録証の訂正や再交付、登録簿のコピーや閲覧にもそれぞれ所定の手数料がかかります。

計量証明書作成時の注意点

続いて登録に必要な書類のうち、計量証明書のサンプルについて補足を加えておきましょう。用紙サイズや仕様は任意ですが、必須記載事項と間違いやすい点があるので注意してください。

計量証明書に関する検定所からの指導書

こちらは大阪府計量検定所から送られてきた計量証明書の記載事項に関する指導です。指導内容は主に以下の6点です。

指導内容 指導理由
「計量証明事業者」の標章を使用する場合は事業規定に記載し、届出をした場所に使用する。 届出等をせずに使用している事業者がいるため。
「重量」ではなく、「質量」と記載する。 従来の事業者の中には「重量」と記載してきたところも多いが、現在は「質量」で統一する方針になっているため。
「計量したことを証明する」という旨の文言を必ず記載する。 計量法施行規則の第四十四条第二項の一「計量証明書である旨の表記」を徹底するため。
単位は小文字に統一する。 従来の事業者の中には「KG」「Kg」などを使用してきたところもあるが、現在は小文字で統一する方針になっているため。
「公認」ではなく「登録番号」を記載する。 計量法施行規則の第四十四条第二項の四「計量証明を行った事業所の所在地及び登録番号」に則した記載内容にするため。
本社と事業所の住所が違う場合は、本社の住所も必ず記載する。 計量法施行規則の第四十四条第二項の三「計量証明書を発行した計量証明事業者の氏名又は名称及び住所」の記載を徹底するため。

これから計量証明書のサンプルを作成する事業者はもちろんですが、すでに計量証明事業を行っている事業者も自社の計量証明書のフォーマットを改めて確認したうえで、管轄の計量検定所の方針に合わせた計量証明書を発行するようにしましょう。

また、計量証明事業所ではないのに「計量証明書」と記載されている場合は「計量票」や「計量書」に変更してください。

計量証明事業者登録後の立入検査

指を指している中年男性

各都道府県の検定所では定期的に、古紙や鉄くず・スクラップ等の質量に関わる計量証明事業者や、土壌や水質の分析、音圧レベルの測定などの環境に関わる計量証明事業者に対して立入検査を行っています。

検定所はこの立入検査によって、適正な検査が行われているかを調べ、場合によっては指導を行うなどして、適正計量の確保に努めています。なお、立入検査の連絡が来た場合は概ね以下の項目が検査されますので、あらかじめ用意しておきましょう。

【質量】計量証明事業者に対する検査項目

 (1)計量証明事業者登録証の保管及び記載事項の確認。
 (2)事業規程の保管及び記載事項の確認。
 (3) 事業規程で定めた細則の保管及び記載事項の確認。
 (4) 計量証明設備及び検査成績書の確認。
 (5) 計量証明書必須記載事項の確認。
 (6) その他。(計量器に関する管理等)

検査に必要な書類(準備する書類等)

 (1)計量証明事業者登録証。(額等で掲示の場合は、取り外し不要)
 (2)事業規程及び細則。
 (3)計量証明検査成績書。
 (4)主任計量者の合格証。
 (5)計量証明書。(伝票)
 (6)計量証明検査の遵守状況の記録簿等。
   (計量器に関する管理台帳等)

まとめ

計量証明事業は都道府県に登録して初めて行える事業です。そのため登録後も都道府県の意向や指導にアンテナを張り、適宜書類の様式や業務の進め方などを調整する必要があります。これから計量証明事業を始める事業者も、すでに計量証明事業を行っている事業者も、適正計量の確保に努めましょう。

ちなみに届出様式などは各都道府県検定所のホームページにアップロードされていることが多いので適宜確認するようにしてください。

何かわからないことがあれば、まず管轄の計量検定所に問い合わせてみましょう。問い合わせ先は経済産業省のHPをご覧ください。